鉄を知る(伝統技法)
1995年アメリカノースカロライナ ジョンキャンプベルフォークスクールにて初歩からガーデンゲート製作まで6週間学びました。
その後オープンスタジオでは伝統的な技法を駆使し、鉄での仕事を展開してきました。
鉄を知ると題して私の経験を元に技法ごとに書きました。お役に立てばうれしいです。

鉄のイメージは非常にさびしい。鉄の仕事に携わる1人として鉄のことを少しづつ書きつづりたいと思います。
鉄は重い、錆びる。冷たいなど一般的な誰でもが抱くイメージ。

鉄は重い。
たとえば鉄製のフライパンや鍋はたしかに重い。
主婦が鉄製は錆びるし、重いからと軽いアルミニュームに変わったのは何時からだろう?
昔、話を聞いたことがある。『ヨーロッパでは嫁入り道具に祖母や母が使用していた鍋やフライパンを持っていくと』 当然 丈夫な鉄や銅器なので腕っぷしの強い肝っ玉母さんを想像します。
アルミに変わったことで最近アルツハイマー病のことを耳にします。
もう一度鉄器を見直そう。

鉄は錆びる。
確かに湿度の高い日本では錆びは速い速度で進行する。しかし錆びによる腐食の度合いは10年で1mmと言われている。
錆びは茶色から漆黒まで色々な色合いを呈する。肥後象嵌は極端にさびを人工的にだした漆黒である。
赤茶けた鉄の色はすごくきれいと思うのは私だけでしょうか?

鉄は冷たい。
鉄製のスチール家具、塀、戸など確かに冷たい感じを受ける。直線的で味気なく冷たいだけ、もちろん事務所などは機能的でいいと思いますが、家庭ではどうかと思います。
デザイン次第で暖かく、楽しい鉄の家具、門扉など出来るはずです。
小.中学校で習った鉄器時代、器や武器は作られましたが他に見当たりません。日本では鉄の文化は無いようです。
野鍛冶、刃物の鍛冶屋職は現在でもありますが、生活に彩を添える鉄モノは無いようです。
ヨーロッパやアメリカでは鉄の工芸が盛んです。ガウディのデザインした門扉などすばらしいものがあります。
私の所属するABANA(Artist Blacksmith's Association of North America)のメンバーは4000人近くいます。
彼らの活動は多岐にわたりますが2年に1回開かれるABANA Conference、大学、寮、食堂全てを借り切りデモンストレーションや講義などを2日間約2,000人が集い、情報交換をするのです。

私は1996年Rochester NewYork 、98年 Asheville NorthCarolina 、2000年 Flagstaff Arizona  02年Lacrosse Wisconsin 06年Seattle Wasigtonに参加、多くのことを学び、友人も出来ました。
今年は歴代大統領の彫刻のある山ラシュモア山で有名なRapid city South Dakotaで行われますが残念ながら参加しません。 

鉄のこと1  鉄のイメージ
鉄のこと2 金床とハンマー

鍛冶屋にもっとも必要な 金床(かなとこ、アンビル)とハンマー、金床の本体は鋳物ですが、TOPの表面は鋼で出来ています。 アメリカで6週間鉄の講座を受けて始めて四角の穴(ハーディーホール)、先端のツノ(ホーン)の意味が解り、感心しました。
丸いツノの形をしたホーンの上に金属を載せ角の丸いハンマーで叩くと金属は延びる。さらに半分づつ、ずらしながら叩く(ハーフブロー)と細長い形が出来上がる。 このことをドローアウトまたはテーパーリング  といい鍛造の最も初歩的な技術で、植物のつたのように形作るスクロールには欠かせないものの1つです。
鉄の棒を曲げる時のみ使用していた四角の穴はハーディ チズルをセットしてハンマーで叩き鉄を切断したり、自作で作ったホルダーをセットしたりするものだとわかりました。
ハーディー チズルは鉄を炉(コールフォージ)で焼く場合と生の鉄を切る場合では先端の角度が異なります。生の鉄を切る場合は先端が鈍角です。
 今でこそ高速カッターやディスクグラインダーがありますが、モーターのない産業革命以前、既に鍛鉄の技法は確立しいていた訳でハーディー  チズルは十分役立ったに違いありません。
阿蘇ものづくり学校の鉄工塾では電気のない状態を想像しての作業、 あるのは火と金床、そしてハンマーを強調して行います。

余談ですがJ.C.C.Fでは金床を爆薬で飛ばすイベントがあります。ユーチューブで見つけましたので参考にしてください How to Shoot an Anvil 200 Feet in the Air
 ハンマーの形は国によりいろいろです。日本のハンマーは柄の重心は上のほうにあります。振り上げる時に力は要るが降ろす時は力が要らず楽とのこと。アメリカのハンマーは重心が中央に位置しています。

左2本が日本  右2本アメリカ彼らは非常に大きな、重いハンマーを女性のBLACKSMITHでも軽々と使いこなしています。私がよく使用するハンマーは800g、950gです。

現在はさまざまなハンマーが使用されています。足ふみハンマー(トリドルハンマー)。電気のない山奥とかでは威力を発揮します。ペダルを踏むことでハンマーヘッド約10 Kgの鉛が上下に動き、ハンマーとして利用するものです。ペダルを強く踏むため日ごろあまり使わない太ももの裏の筋肉が痛くなるようです。
3相200V(動力線)5馬力以上のコンプレッサーを使いエアーハンマー(Ron Kinyonデザイン)がお勧めです。ペダルを踏めばエアーによりシリンダーの先端のハンマーヘッドが上下し鉄を一気にフォージします。
シリンダーの径に比例して強力なパワーが得られます。
オープンスタジオではABANAエアーハンマーの製造、販売もしています。
アメリカではリトル ジャイアントという古いスプリングハンマーがあり、今でもABANAのメンバーは使っています。ドイツのクーヘンというハンマーは、あまり鉄を焼く必要がなく、ハンマーリングするとどんどん鉄が赤くなっていき、すばやくフォージ出来るすばらしいものです。値段もすばらしい。連続的な打撃により電子レンジのような状態になりひとりでに熱くなるようです。